EBN メタボリックシンドローム最新改善法

メタボリックシンドロームの要因は、過食や運動不足で余ったエネルギーが肝臓で中性脂肪となり、腹腔内に貯まり込んだ状態で、内臓脂肪症候群と呼ばれています。メタボリックシンドロームの問題点は、この内臓脂肪細胞から糖尿病や動脈硬化症、高血圧などを引き起こす様々な生理活性物質が分泌されるため、生活習慣病のリスクファクターが一個人に複数集積し、糖尿病や心疾患が憂慮されることです。改善策は、食事改善、運動量増加により増幅した内臓脂肪の減少です。EBNメタボリックシンドロームの改善・予防策とは、以下に、エビデンスを示します。

EBNメタボリックシンドローム 改善・予防策のエビデンス

Long-Term (5-Year) Effects of Dietary Intervention for Reducing the Risk Factors
of Metabolic Syndrome among Japanese Male Workers.

■ 概要

Objective:The aim of this study was to assess the effectiveness of long-term (5-Year)intervention of dietary education to reduce the risk factors of MetS among Japanese male workers.
  Dr.Akiyo SHIOHARA and Dr.Mariko WATANABE
  共著   The Japanese Journal of Health and Human Ecology   pp.131-142   2010/05

要旨(日本語版)

健診受診者におけるMetSリスク要因の5年間の経年変化と栄養教育評価

研究結果:
食事介入(DI)群では、
  1. 体重は食事介入群で5年間に2.2±4.6kgと改善傾向が見られた(p<0.10)。
  2. LDL-C値は食事介入群でのみ基準範囲を維持することができ、5年経過時点のLDL-C値は127.7±35.7 mg/dlであった。これに対し、非食事介入群のLDL-C値は、ベースラインから2年間は正常値を維持するも、3年経過時点から漸次上昇し、5年後のLDL-C値は151.1±62.4 mg/dlと異常値を示した(p<0.001)。
  3. TG値は、食事介入群ではベースライン時には162.5±86.3mg/dlと基準範囲を超え異常値を示したが、5年後には107.3±41.6mg/dlと有意に低下がみられた(p<0.01)。
  4. 食事介入群でのエネルギー摂取は5年間で10%低下した。
  5. メタボ改善要点は1)3食の規則正しい摂取、2)適正な主食量確保、3)適正な野菜量確保。
結論:
本研究により、日本人勤労男性における継続的栄養教育は、メタボリックシンドロームのリスク低減への重要性を有することが示唆された。
糖尿病の要因

糖尿病は、膵臓のβー細胞から分泌されるインスリンの分泌不足、あるいはインスリンの作用不足によって血漿中グルコース(ブドウ糖)の細胞への取り込みが低下し、血漿中のグルコースが増加し、高血糖状態になります。
糖尿病の問題点は、脂質異常症、高血圧症、動脈硬化症、さらには心筋梗塞、脳梗塞、網膜症、腎不全症の合併により、QOL(生活の質)が著しく低下します。
それゆえ、未然に防ぐ取り組みが極めて重要です。
改善策のポイントは、エネルギーの適正摂取、3食のエネルギーバランスを朝:昼:夕=1:1:1とする。夕食のまとめ食いを止めて、朝食の適量摂取です。
EBN糖尿病の改善・予防策とは、以下に、そのエビデンスを示します。

EBN糖尿病 改善・予防策のエビデンス

Randmized Controlied Trial of a New Dietary Education Program Prevent Type 2 Diabetes in a High-Risk Group of Japanese Male Workers

■ 概要

Coclusion:The NED was shown to reduce glucose levels in high-risk subjects for type 2.
  Watanabe M, Yamaoka K, Yokotuka M, Tango
  共著   Diabetes Care   pp.3209-3214   2003

要旨(日本語版)
背景
糖尿病の栄養教育のためには、個人の食事摂取量を評価するための簡便で精度の高い評価法が必要不可欠である。
これまで、半定量食物摂取頻度調査法に基づき、65項目の食品リストで構成するFFQW65を開発し、その妥当性及び再現性を検討してきた(山岡・渡辺・丹後・横塚,公衛誌,2000)。
最近、世界的にも糖尿病のハイリスク群を対象とする介入研究が活発になりつつある(Eriksonら,1991、Knowlerら,1995]、Panら,1997,DPPRG,1999,2001)。
目的 本研究は、EBNの一環としてOGTT境界型を対象とし、RCTにより、FFQW65に基づいた栄養教育効果の評価を検討することを目的とする。
研究仮説 FFQW65への回答結果に対応した新栄養教育は、従来型教育に比べて、1年後の静脈血漿糖値(以下、血糖値と記す)の開始時に対する変化率の差が10%以上低下する。
研究デザイン
某人間ドック受診者でOGTTにより境界型と診断された男子勤労者を対象として、2種類の栄養教育法を無作為割り付けに基づく平行群間比較試験にて行う。研究仮説を検証する目標サンプルサイズは各群85名(両側検定、有意水準5%、検出力90%)である。
FFQW65 FFQW65 »では65項目の食品リストについての摂取頻度とポーションサイズを入力し» 、朝・昼・夕食および1日あたり推定摂取量を食品群別に算出する(山岡・渡辺ら,公衛誌, 2000)。この推定摂取量から糖尿病食品交換表の摂取目標単位(身長から換算したエネルギー摂取量)に対する充足率を求め» 、1年後の充足率の改善指数(定義:100%からの差の絶対値の前後差(後ー前))により食事摂取の改善の程度を評価した。
<従来型栄養教育>
従来型栄養教育とは、任意の出席で行われる健康教室による集団指導である。受診者に対して、担当医が受診結果を解説、保健師、栄養士、が一般的な生活指導、食事指導などを行う。栄養士は、必要に応じて、食事記録調査を依頼する場合もあるが、敏速に分析し、正確度の高い情報をフィードバックすることは、極めて困難な状況にある。
問題点 患者の食習慣上の問題点が不明確な状況下での栄養教育では、患者の食事改善や食行動修正につながる的確な栄養教育を施すことはできない。そのため患者自身は具体的な食事改善の実践方策が得られず、改善効果が期待できない。
<新栄養教育のポイント>
  1. 適切な情報を与える。
  2. モチベーションを高める。
  3. 自ら行動変容の必要性を認識させる。
FFQW65回答結果に基づき、算出された充足率などの分析データを、患者にフィードバックできる。栄養教育担当者はこの分析データに基づき、患者に対して、栄養教育を行う。
食習慣上の問題点を明確に提示できるため、患者は改善点を自覚し、教育担当者は具体的な栄養教育を行える。
FFQW65の回答結果を用いた糖尿病予防のための栄養教育の要点
  1. エネルギーの適正摂取
    朝・昼・夕食のエネルギー摂取バランスを1:1:1、特に朝食の充足、夕・夜食の減量を図る。
  2. 食品グループの適正摂取
    食品グループの適正摂取(特に、穀類、肉類、油脂類、野菜類、酒類、菓子など)を図る。
  3. その他 動物性脂肪の過剰摂取是正、食物繊維の摂取奨励、減塩の奨励、規則正しい食事リズムをとる。
解析対象と統計解析
本報告の解析対象数は平成11年2月から2年間の間に、1年後の健診結果、およびFFQW65への回答の得られた境界型141名(RCTによる割付;新教育群83名中70名、従来型群84名中71名、本期間登録者167名中84%)。
栄養教育を開始後1ヶ月及び6ヶ月に行い、1年後の血糖値および、FFQW65を調査した。負荷後2時間値の開始時点での群間差を共分散分析>>により調整し、教育効果について検討した。
結果
平均年齢は新教育群54.9、従来型群55.2であった。FFQW65から推定した食事ごとの改善指数でみると、夕食及び1日総エネルギー充足率も新教育群で有意に(ともにp<0.001)改善していた。また、充足率の改善指数と負荷後120分値の変化率との間にも有意な正の関連(スピアマン相関係数0.28、p<0.01)がみられ、食事の改善と血糖値の改善との関連性が示唆された。 次に本研究のエンドポイントである血糖値について検討した。粗データでは新教育群で1年後に血糖値が低下する傾向があった。しかし、開始時点での負荷後血糖値に差が認められた(新教育群145.6mg/dl、従来型群133mg/dl、p<0.001)。
そこで、共分散分析により調整したeffect sizeを検討したところ、有意な低下が認められた(調整済変化率の差と95%信頼区間:-18.0% (-10.4% ~ -25.6%))。
まとめ
今後、目標サンプルサイズ(170)に至るまで研究を継続していく必要があるが、本研究により栄養教育効果の評価が科学的視点から行える可能性が示唆された。

「アマニ油」サプリメントの肥満・高血圧改善効果

「アマニ油」は善玉脂肪酸の宝庫 〜
体内でDHA・EPAに変換されメタボ改善効果を発揮

アマニ油は、アマ科の1年草の種子(亜麻仁)から絞った油で、人体に不可欠なn―3系脂肪酸(脂肪酸とは油脂の構成成分)のα―リノレン酸を約60%含んでいます。

摂取されたα―リノレン酸は体内でDHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)に変換されて、その効力を発揮します。アマニ油はα―リノレン酸の貴重な供給源として欧米では早くから活用されており、最近では、日本のスーパーやデパートの食用油売り場などでも見かけられるようになりました。

n―3系脂肪酸には、血液中の中性脂肪値の低下、血栓(血液の塊)の生成防止や、不整脈の発生防止をはじめ、脳神経機能の維持、目の網膜機能の維持など重要な生理作用と生活習慣病の予防効果が認められています。

n―3系脂肪酸には、食用調理油に含まれるα―リノレン酸と魚油のDHA・EPAなどがあります。人体で合成されないため、毎日の食事で摂取する必要があり、n―3系脂肪酸の摂取目標量は1日当たり約2グラム以上(日本人の食事摂取基準)ですが、摂取不足が指摘されています。
一方、現代人は、コーン油や大豆油、紅花油などの食用調理油を揚げ物、炒め物、ドレッシングなどで摂取しています。これらの油に多く含まれるリノール酸はn―6系脂肪酸に属し、体内で合成できないため、n―3系脂肪酸と同様に必須脂肪酸と呼ばれています。

かつて、リノール酸は健康増進に役立つとして、積極的な摂取が推奨されていた時代がありました。ところが最近は、このリノール酸の過剰摂取が、動脈硬化の進行や心臓病の発生を招く要因として問題視されはじめているのです。

また、過食や運動不足によって内臓脂肪が増大し、高血圧・高血糖・脂質異常が併発するメタボリックシンドローム(以下、メタボ)や糖尿病の増加に対し、効果的な改善策が求められています。このような健康問題を改善し、高血圧や心臓病・糖尿病を防ぐのに役立つ脂肪酸として摂取を推奨されはじめたのが、アマニ油に多いα―リノレン酸です。

アマニ油の内臓脂肪減少効果、降圧効果が臨床試験で判明

そこで私たちは、アマニ油を用いた臨床試験を、平均年齢51歳の男女10人の協力を得て行いました。被験者には、食事や運動の種類や時間を指導し、生活習慣のばらつきをなくしたうえで、アマニ油の粒食品を毎日12粒(α―ノレン酸2・1グラム)ずつ、2ヵ月間摂取し、次の2ヵ月間は摂取を中止してもらい、開始前、2ヵ月後、4ヵ月後に医師による検査を行ったのです。

すると2ヵ月後、血圧については最大・最小ともに、全対象の平均値に有意な低下が認められました。また、血液中の遊離脂肪酸(中性脂肪の分解物)の量も明らかに減少し、体重が平均して2キロも減ったのです。これらは、主に内臓脂肪が2キロ近く減り、メタボが改善したことを示す何よりの証拠です。

そのしくみとしては、アマニ油の摂取により、α―リノレン酸が体内でDHA・EPAに変換され、内臓脂肪が燃焼してエネルギーとして消費されるのを促した(専門的には、脂肪酸のβ―酸化という)結果と考えられます。

事実、体重・BMI(肥満指数)、遊離脂肪酸の有意な減少と、内臓脂肪量の減少が確認できました。また、内臓脂肪量が減少した結果、内臓脂肪細胞から分泌されて血圧を上昇させる生理活性物質のアンジオテンシノーゲンや遊離脂肪酸の分泌も減少し、高血圧改善、遊離脂肪酸の減少効果が得られるのだろうと考えられました。

さらに、アマニ油の摂取を中止した4ヵ月後の検査では、血圧も遊離脂肪酸の量も上昇に転じたことから、血圧の低下や遊離脂肪酸の減少などの効果はアマニ油の摂取によるものと結論づけられました。

通常の食事指導で内臓脂肪を2キロ減らすためには、最低でも半年はかかります。それが2ヵ月で実現したのですから、アマニ油の効果には目を見張るものがあるといえるでしょう。

アマニ油を毎日欠かさずとる方法

アマニ油の効果を期待するには、毎日欠かさずとる食習慣が大切です。今回の臨床試験ではカプセル状のサプリメント(栄養補助食品)を朝食時にとるようにしました。携帯できてとりやすい粒食品が各種市販されているので、それを使うのが最も簡単でしょう。

食用調理油としてアマニ油をとる場合は、熱に弱いので、加熱しないでそのままとることが大切です。ゴマ和えや白和え、ダイコンおろしなど加熱しない料理の隠し味として使うのがおすすめです。また、牛乳やヨーグルト、豆乳に加えてもいいでしょう。

さらに、カレーやシチュー、スープを食べる直前に加えてもおいしくいただけます。α―リノレン酸の1日当たりの摂取目標量は約2グラム以上なので、アマニ油は1日に小さじ1~2杯を目安に摂取すればいいことになります。

血圧が高めで脳卒中や心筋梗塞を起こさないか心配でいる人は、今日からでも遅くありません。血管をしなやかに保つために、アマニ油をぜひご活用ください。

EBN 動脈硬化の最新予防法 —食事と運動—

「人は血管とともに老いる」といわれています。
血管を若々しく保つための最新予防法を身につけましょう。動脈硬化はいわば血管の老化現象ともいえますが、個人差が大きく、その人の生活習慣に大きく左右されます。病気を理解し、普段からどういう治療をすれば予防につながるのか、下記の文献を引用し、
第一線の専門家が動脈硬化の最新予防法をお示しします。

山科章 監修「動脈硬化の最新予防法」動脈硬化予防啓発センター(2008)

著者
  • 松澤佑次:大阪大学名誉教授 財団法人住友病院院長
  • 寺本民生:帝京大学医学部内科学講座主任教授
  • 山科 章:東京医科大学内科学第2講座主任教授
  • 久野譜也:筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授
  • 松田文子:宇都宮中央病院糖尿病センター所長
  • 渡辺満利子:昭和女子大学大学院生活機構研究科教授

さて、みなさんは「動脈硬化」を正しくご存じでしょうか。動脈硬化とは動脈が年齢とともに硬くなり、弾力性を失うと同時に、その内壁にコレステロールなどが沈着して、粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれるふくらみが形成される病態です。
この動脈硬化が原因となって発症する病気に、心筋梗塞や脳卒中などのこわい病気があります。心臓や脳などの血管という循環器系に関わる病気なので、これらは合わせて「心血管疾患」と呼ばれていますが、高齢者の死因でみますとそれは35%に上り、がんを抜いてトップなのです。

日本の高齢者死因

動脈硬化の発症・進展は多様な危険因子の重なりによって引き起こされることがフラミンガム(Framingham)研究はじめ、多くの研究成果により証明されてきた。その中で最も重要な危険因子は、高LDLコレステロール血症であり、低HDL-コレステロール血症、加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)、糖尿病(耐糖能異常含む)、高血圧、喫煙、冠動脈疾患の家族歴が検証されている。

欧米のメタ解析によるとLDL-コレステロール値の低下により冠動脈疾患は約21%、脳梗塞は約20%有意に抑制され。脳出血には影響がないことが示された。わが国のMEGA研究では、LDL-コレステロール値18%の低下で、冠動脈疾患は33%の低下をみています。

動脈硬化とは…

EBN 糖尿病の最新予防法

糖尿病とは

糖尿病は、膵臓のβー細胞から分泌されるインスリンの分泌不足、あるいはインスリンの作用不足によって血漿中グルコース(ブドウ糖)の細胞への取り込みが低下し、血漿中のグルコースが増加し、高血糖状態になります。糖尿病の問題点は、脂質異常症、高血圧症、動脈硬化症、さらには心筋梗塞、脳梗塞、網膜症、腎不全症の合併により、QOL(生活の質)が著しく低下します。それゆえ、未然に防ぐ取り組みが極めて重要です。 改善策のポイントは、エネルギーの適正摂取、3食のエネルギーバランスを朝:昼:夕=1:1:1とする。夕食のまとめ食いを止めて、朝食の適量摂取です。 EBN糖尿病の改善・予防策とは、以下に、そのエビデンスを示します。

EBN糖尿病 改善・予防策のエビデンス

Randmized Controlied Trial of a New Dietary Education Program Prevent Type 2 Diabetes in a High-Risk Group of Japanese Male Workers

■ 概要

Coclusion:The NED was shown to reduce glucose levels in high-risk subjects for type 2.
Watanabe M, Yamaoka K, Yokotuka M, Tango
共著   Diabetes Care   pp.3209-3214   2003

要旨(日本語版)
背景
糖尿病の栄養教育のためには、個人の食事摂取量を評価するための簡便で精度の高い評価法が必要不可欠である。
これまで、半定量食物摂取頻度調査法に基づき、65項目の食品リストで構成するFFQW65を開発し、その妥当性及び再現性を検討してきた(山岡・渡辺・丹後・横塚,公衛誌,2000)。
最近、世界的にも糖尿病のハイリスク群を対象とする介入研究が活発になりつつある(Eriksonら,1991、Knowlerら,1995]、Panら,1997,DPPRG,1999,2001)。
目的 本研究は、EBNの一環としてOGTT境界型を対象とし、RCTにより、FFQW65に基づいた栄養教育効果の評価を検討することを目的とする。
研究仮説
FFQW65への回答結果に対応した新栄養教育は、従来型教育に比べて、1年後の静脈血漿糖値(以下、血糖値と記す)の開始時に対する変化率の差が10%以上低下する。
研究デザイン 某人間ドック受診者でOGTTにより境界型と診断された男子勤労者を対象として、2種類の栄養教育法を無作為割り付けに基づく平行群間比較試験にて行う。研究仮説を検証する目標サンプルサイズは各群85名(両側検定、有意水準5%、検出力90%)である。
FFQW65 FFQW65 »では65項目の食品リストについての摂取頻度とポーションサイズを入力し» 、朝・昼・夕食および1日あたり推定摂取量を食品群別に算出する(山岡・渡辺ら,公衛誌, 2000)。この推定摂取量から糖尿病食品交換表の摂取目標単位(身長から換算したエネルギー摂取量)に対する充足率を求め» 、1年後の充足率の改善指数(定義:100%からの差の絶対値の前後差(後ー前))により食事摂取の改善の程度を評価した。
<従来型栄養教育>
従来型栄養教育とは、任意の出席で行われる健康教室による集団指導である。受診者に対して、担当医が受診結果を解説、保健師、栄養士、が一般的な生活指導、食事指導などを行う。栄養士は、必要に応じて、食事記録調査を依頼する場合もあるが、敏速に分析し、正確度の高い情報をフィードバックすることは、極めて困難な状況にある。
問題点 患者の食習慣上の問題点が不明確な状況下での栄養教育では、患者の食事改善や食行動修正につながる的確な栄養教育を施すことはできない。そのため患者自身は具体的な食事改善の実践方策が得られず、改善効果が期待できない。
<新栄養教育のポイント>
  1. 適切な情報を与える。
  2. モチベーションを高める。
  3. 自ら行動変容の必要性を認識させる。
FFQW65回答結果に基づき、算出された充足率などの分析データを、患者にフィードバックできる。栄養教育担当者はこの分析データに基づき、患者に対して、栄養教育を行う。
食習慣上の問題点を明確に提示できるため、患者は改善点を自覚し、教育担当者は具体的な栄養教育を行える。
<FFQW65の回答結果を用いた糖尿病予防のための栄養教育の要点>
1)エネルギーの適正摂取
朝・昼・夕食のエネルギー摂取バランスを1:1:1、特に朝食の充足、夕・夜食の減量を図る。
2)食品グループの適正摂取
食品グループの適正摂取(特に、穀類、肉類、油脂類、野菜類、酒類、菓子など)を図る。
3)その他
動物性脂肪の過剰摂取是正、食物繊維の摂取奨励、減塩の奨励、規則正しい食事リズムをとる。
解析対象と統計解析 PDF PDF File
まとめ
今後、目標サンプルサイズ(170)に至るまで研究を継続していく必要があるが、本研究により栄養教育効果の評価が科学的視点から行える可能性が示唆された。

EBN メタボ改善実証

Long-Term (5-Year) Effects of Dietary Intervention for Reducing the Risk Factors of Metabolic Syndrome among Japanese Male Workers.

■ 概要

Objective:The aim of this study was to assess the effectiveness of long-term (5-Year)intervention of dietary education to reduce the risk factors of MetS among Japanese male workers.
Dr.Akiyo SHIOHARA and Dr.Mariko WATANABE
共著   The Japanese Journal of Health and Human Ecology   pp.131-142   2010/05

要旨(日本語版)

健診受診者におけるMetSリスク要因の5年間の経年変化と栄養教育評価

研究結果:
食事介入(DI)群では、
  1. 体重は食事介入群で5年間に2.2±4.6kgと改善傾向が見られた(p<0.10)。
  2. LDL-C値は食事介入群でのみ基準範囲を維持することができ、5年経過時点のLDL-C値は127.7±35.7 mg/dlであった。これに対し、非食事介入群のLDL-C値は、ベースラインから2年間は正常値を維持するも、3年経過時点から漸次上昇し、5年後のLDL-C値は151.1±62.4 mg/dlと異常値を示した(p<0.001)。
  3. TG値は、食事介入群ではベースライン時には162.5±86.3mg/dlと基準範囲を超え異常値を示したが、5年後には107.3±41.6mg/dlと有意に低下がみられた(p<0.01)。
  4. 食事介入群でのエネルギー摂取は5年間で10%低下した。
  5. メタボ改善要点は1)3食の規則正しい摂取、2)適正な主食量確保、3)適正な野菜量確保。
    結論:本研究により、日本人勤労男性における継続的栄養教育は、メタボリックシンドロームのリスク低減への重要性を有することが示唆された。